外貨建て資産における法人税法の取扱い

外貨建て資産における法人税法の取扱い

今回は、8/16に発表された、
「外資系の大手の生命保険会社「アリコジャパン」が、
東京国税局から約178億円を追徴課税される見込みとなった」
という記事がありました。

 

これは、円高による外貨建て資産の含み損を申告したが、
国税局から認められなかったという内容です。

 

この記事から、外貨建て資産における法人税法の取扱いについて
詳細に見ていこうと思います。

 

まず、外貨建取引の基礎をしっかりと理解しましょう。

 

日本で貸借対処表・損益計算書を作成し、確定申告書を税務署に
申告するには、すべて「日本円」での金額にて作成しなければなりません。

 

昨今では、海外との取引も身近になってきたため、
ドル建ての取引なども起こりえます。

 

その場合、例え、ドルで売上げをしたとしても、
必ず「日本円」に「換算」しなければなりません。

 

この「換算」には、ルールが設けられています。
その第一ルールが、「外貨建取引を行った場合には、発生時のレート
で換算をする」です。これが大原則です。

 

ちなみに、多少脱線しますが、外国為替相場を理解するうえで、
TTM、TTB、TTSという用語があります。

 

TTSは、「Telegraphic Transfer Selling rate」の頭文字で
「対顧客電信売相場」と日本語ではいいます。
これは、銀行が顧客に売るときの値段という意味です。

 

TTBは、「Telegraphic Transfer Buying rate」の頭文字で
「対顧客電信買相場」と日本語ではいいます。
これは、銀行が顧客から買うときの値段という意味です。

 

TTMは、このTTBとTTSの間の金額です。一般に
「仲値(なかね)」と呼ばれます。
通常、発生時のレートといった場合、このTTMを使用します。

 

例えば、平成21年8月13日(木)のドルのTTMレートが
95,38円だったとします。

 

このときに1万ドルの掛売上げがあった場合、

 

 売掛金 953,800円 / 売上 953,800円 ※

 

※ 95.38×10,000ドル=953,800円

 

という仕訳を計上します。

 

この代金が次の日(この時のレート:94.91円)に入金され、
すぐに円に換算された場合、

 

 現金     ※949,100円 / 売掛金 953,800円
 為替差損     4,700円

 

  ※94.91×10,000ドル=949,100円

 

差額が為替差損や為替差益として計上されます。
これだけで済めば、まだ外貨建ての話もわかりますよね?

 

外貨建ての面倒な点は、期中ではなく、実は期末の評価額を
いくらにするのか、ということです。

 

例えば、上記の売掛金が、この会社の決算月である、
平成21年9月末の時点で、未だ入金がされていないとします。

 

この場合、帳簿上の実際の金額は、売掛金 10,000ドルではなく、
8/13時点のレートによって計上した953,800円になっています。

 

しかし、為替相場というものは、日々変動します。
例えば、大幅な円高により、平成21年9月末のレートが
85円だったとしたらどうでしょう?

 

この会社の売掛金は953,800円でいいでしょうか?
なんとなくよくないですよね。実際に、9月末に円でもらった場合、
10,000ドル×85円=850,000円にしかならないからです。

 

なんと103,800円も何もしていないのに為替の影響で
損をしていることになります。

 

このような為替の影響をどのように期末時点で処理するかが
非常に重要なポイントになるわけです。

 

期末時点の税務上の為替の換算の取扱いには、大きく2種類があります。
「発生時換算法」と「期末時換算法」と呼ばれるものです。

 

「発生時換算法」とは、発生時点のレートを使用する方法です。
これは、上記でみた期中の処理をそのまま期末で
何もしないということになります。

 

「期末時換算法」とは、期末時点のレートを使用する方法です。
これは、決算時点のレートに換算し直すという方法です。

 

また、資産の種類ごとに上記のいずれかを使用することが決められています。

 

具体的には、下記のような表になります。

 

→ http://bokikaikei.net/2009/07/post_701.html

 

 

アリコのケースのような場合は、外貨建ての株式などを売買以外の目的で
持っている場合に該当し、発生時換算法を使用することになります。

 

発生時換算法の場合には、税務上は、決算では特段の処理は必要ありません。

 

しかし、法人税法の基本通達13の2-2-10において、
「為替相場の著しい変動があった場合の外貨建資産等の換算」
というものがあります。

 

これは、為替相場が次の算式により計算した割合が、おおむね15%以上に
相当するときには、外貨建資産に関して、
「外国為替の売買相場が著しく変動した場合」に該当するものとして、
外貨建資産の評価替えが認められるというものです。

 

(期末換算評価額 − 帳簿価額) /期末換算評価額

 

EX)
1万ドルの有価証券を購入した場合で、
期末時レート 1ドル88円、取得時レート 1ドル105円の場合

 

(88×1万 − 105×1万)/88×1万 =19.3%

 

(仕訳)
有価証券評価損 17万円 / 有価証券 17万円

 

上記の取扱いを行ったが、アリコは、この外貨建有価証券の
デリバティブ取引をからませていたようです。

 

デリバティブ取引についてはここでは割愛しますが、
簡単にいうと、為替の評価損を相殺するための評価益が
計上できるような内容の取引です。

 

そのため、国税局は、このデリバティブを含めると、
15%以上に相当しないため、上記の評価損を否認した
ということになると推定されます。

 

今回は以上です。

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